★情報の少ない求人広告
こうして営業でとってきた求人広告を、自分で試行錯誤してコピー文章を練り上げました。これがことごとく、効果を上げるようになったのです。今まで話したとおり、私は会社を、独立やバイト含めて7社渡り歩いてきました。当然その間、転職希望者として求人広告を数千社は見たでしょう。また、求人広告の営業マンとしても、リストアップのために数千社の求人広告を見てきました。そして思ったんです。「求人広告はなんと情報が少ないんだ」。特に新聞広告はそうでしたね。今もソウですが、簡単な職種と待遇と会社名、電話番号が羅列してあるだけ。それで「履歴書を送付せよ」ですね。
就職・転職経験のある人はおわかりでしょう。就職・転職するというのはもの凄い決断ですね。最近は転職も当たり前ですが、それでも職を変える、選ぶというのは、特に男にとっては「男子一生の決断」。転職しなくても、履歴書を出すという行為だけでも大変な決意がいるもんです。問い合わせの電話だって、かなりの勇気が入ります。それほど、応募者側にしたら、就職・転職というのは一大事なんです。
ところが、人生の決断をしたいのに、情報はわずかタバコの大きさ程度の、それも簡単なデータが書いているだけの求人広告では、迷うのは当たり前ですね。しかし、求人を出す側=会社とそれを請け負う広告代理店は、意外に広告制作がいい加減。職安の求人票も同じです。ちょろちょろっと書いてあるだけでは、その会社や仕事のことがよくわかりませんね。特に転職者の場合、新卒の段階で、会社の名前やイメージだけで選んで失敗している人がもの凄く多い。かくいう、私がそうでした。ヤマハ発動機というかっこよさだけで選び、仕事内容なんて何も考えなかった。結果は9ヶ月でノイローゼです。だから、上辺の情報だけでなく、中身を詳しく知りたい。
★数倍のスペースの求人雑誌
そこを突いたのが求人雑誌で、新聞広告と同じ値段なら数倍のスペースでかなりの情報を盛り込める。しかし、こっちはこっちで、せっかくのスペースをクダラナイイメージ写真やイラストで埋めているケースが多い。これは広告屋にとって楽なんですね。写真やイラストはある意味で簡単。文章を書くのが一番大変なんです。さらに、たまにしっかりと文章で情報を書いてある求人広告もありますが、ほぼ全てが歯の浮くようなヨイショコピーばかり。まあ、これは広告コピーの場合は当たり前なんですが、会社のマイナス点には一切触れず、「当社は安定しています」「皆、ワキアイアイです」なんて、どうでもいいコピーばかり。これはねえ、コピー書くのは大体女性ですが、これがまたツマラン「コピーライター養成講座」なんか受けている。電通・宣伝会議なんかが主催しているヤツで、講師は糸井重里とかね。でも、ああいうのはランチェスター戦略で言う「強者の戦略」。大企業のCMやイメージ垂れ流しの広告は、「おいしい生活」なんて軽いモンでもいいですが、中小零細企業向けの場合、広告は一発で結果を出さないと行けない。10万円の広告出したら、即10万円以上の反応をとらねばね。
★記事風のコピー文章を埋める
結局、既存の広告屋はスポンサーの顔ばかり見ていて、そのエンドユーザーのことを真剣に考えていない。かつ、コピーライター屋は太鼓持ちでジャーナリスト精神がなく、かつ、真実を追究する、突っ込む文章力がない。こんなコピーじゃ、読者を動かすコトはムリだなと、ならば俺が書いてやると、幾度も転職で失敗した当事者の経験もふまえ、新聞広告も求人誌の広告も、とにかくスペース一杯に「これでもか」というくらい、記事風のコピー文章で埋めました。そして言われましたねー。「栢野、お前こんなに文章ばっかりでは字も小さくなる。誰も読まないよ」。お客さんにも、広告屋の同僚にも言われましたが、「いや、これでいいんだ。俺が転職希望者として納得するものを作ればいいんだ」と、わずか数センチ四方の広告枠を文字で真っ黒に埋めていきました。その結果は・・・つづく